介護専門誌「 care life today 」に掲載して頂きました。
「ミッケルアート」で〝薬を使わない治療法〞を実現させたい
根拠に基づく認知症ケアで 利用者や家族の生活の質を向上
介護業界における大きな課題の 1つに認知症対策が挙げられま す。高齢者は人と交流する機会が減ると閉じこもりがちになり、それが要介護状態の悪化や認知症の 進行の引き金になる可能性があります。たとえば、親が認知症により家庭内で暴言・暴力が生じれば 家族関係が悪化します。たとえ症状が落ち着いたとしても、計算ドリルや塗り絵など家族ができる認知症対策には限度がありますし、 そもそも親に寄り添える時間がとれない家族も多いでしょう。そこで、高齢者のコミュニケーションを促し交流の機会を増やすことで、利用者や家族の生活の質の向上を図るべく、高齢者が回想しやすい昔懐かしい絵画「ミッケル アート」の開発に取り組んでいます。
認知症ケアは根拠に基づいたもの であることが重要。東京医科歯科大学大学院に共同研究を依頼し、ミッケルアートの効果を実証、2013 年には日本認知症ケア学会石崎賞受賞、翌年には日本認知症予防学会浦上賞受賞を受賞しました。
ミッケルアートのような根拠に基づく認知症ケアは、本人のQO Lアップはもちろん、家族にとっ ても大きな安心につながるものだと考えています。
人材育成に ミッケルアートを活用
認知症高齢者が増加する一方で、デイサービスや有料老人ホームなどでは、介護人材は不足し、離職率も高い状況が続いています。新人職 員を中心とする人材育成、これが 介護業界におけるもう1つの大き な課題です。その解決策としても ミッケルアートが活用できると考 えています。
その一環として、2014年か らミッケルアートの認定研修を開始し、これまでに約200事業所 200人が受講しています。4カ月間、ミッケルアートを使いながら、BPSDを数値評価する通信教育型のカリキュラムで、受講者には学会で発表するなど、スキルアップできる機会も提供してい ます。また、受講者を対象にし た勉強会を各地で開催。事業所の垣根を越えたつながりができ、受講者のモチベーションアップにつながっています。こうしたつながりをベースに、ゆくゆくはミッケルアートを通じて、地域の人々を含めたさまざまな人たちが集うコミュニティをつくりたいですね。
現在、医療のリハビリテーションプログラムに活用できるミッケル アートも開発しています。最終的 には、ミッケルアートを日本発の〝薬を使わない治療法〞として確立させていきたいですね。そのためにも、 病院や介護現場、研究者とのネットワークを広げながら、認知症や高次脳機能障害のさらなる根拠の 確立を図りたいと考えています。