夕方の『帰宅願望、不穏』の症状のある重度の方が、 活動に集中して参加できるようになりました。
【 Q様 女性 80代 】
・介護度 : 5
・認知症の種類 : パーキンソン病
・介護老人保健施設
◼︎ミッケルアートの回想法を通じて
Q様は、普段は日中のほとんどをフロアで過ごし、午前中傾眠傾向が強く、眠ってしまうことが多々ありました。午後3時を過ぎると不穏になり始め、「夕食を作りにいかなくては」「迎えにいかなくては」などと頻繁に立ち上がる姿が見られました。
◼︎帰宅願望、不穏が改善できるまでの様子
ミッケルアートの回想法を行いました。
ミッケルアートには、昔懐かしい絵が描かれています。絵を見ながら、週2回、20分位使って思い出話をすることで、認知症の周辺症状が緩和する効果があります。
<開始から1ヶ月目>
ミッケルアートを実施することで不穏を取り除けるよう考えましたが、じっとしていることが本人には苦痛で拒否されていました。また、問いかけに対しても、絵に関する内容を話すことが少なく、興味を示さない時がありました。
<開始から2、3ヶ月目> 声を出し笑っている姿も見られました。
3ヵ月目に入り、座る場所や位置・声掛けを工夫することで参加することへの抵抗が軽減され、30分座って参加されるようになりました。少しずつ自分の昔のことを話すようになり、家族の話をすると、声を出し笑っている姿も見られました。
<普段の生活> 意思をはっきりと伝えて下さるようになりました。
自分の意思をはっきりと伝えて下さるようになり、「松坂屋へ行き、買い物がしたい。食べ物(ご飯をつくる為)を買いにスーパーに行きたい。」とお話して下さるようになりました。
◼︎周辺症状「帰宅願望、不穏」の改善
大きな変化は見られないものの、少しずつミッケルアートへの姿勢が変化しています。声掛け、座る場所や位置等を工夫することで参加意欲が得られ、一時的であるも興味を逸らせ、不穏を取り除くことができました。
★介護スタッフ様の工夫
開始前、必ず了承を得たうえで行い、開始の挨拶・自己紹介をし、始まるということを意識して頂き、メリハリを大切にし行いました。5~6人の人数でいつもいる場所とは違う場所で実施することで、周囲への注意をなくし絵に集中することが出来ました。
◼︎まとめ
・絵をきっかけに、ご本人の希望を聞き出すことを大切にしました。
・心地よいコミュニケーションを通じて、表情は穏やかになりました。
思い出話をきっかけに、楽しく過ごして頂くことが、認知症予防に繋がると期待されます。
より良い認知症ケアを通じて、ご利用者、ご家族の喜びにお役立てください。
※平成27年日本認知症ケア学会演題発表「ミッケルアート回想療法によるBPSDのクラスター分析」