ある保育園の園長先生とお話しをさせていただきました。
その際にいただいたアドバイスをご紹介いたします。
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1 賞賛と承認の違い
・賞賛
「上手!」「いいね!」は使いすぎると、子どもは、褒められたいからやる。
褒められるような発言をする傾向がある。
保育者の顔色を伺って行動する可能性がある。
・承認
「ここまでできたね!」「こういうところを工夫したんだね!」と事実を伝える。
自己肯定感が高まり、認められることで、自信がつくため、
賞賛するよりも、一人ひとりの行動の過程を承認することを大切にしている。
2 意見を言う子、意見を言わなかった子への対応がポイント
みんなに何かを問いかけた場合、普段から発言するタイプの子に偏る傾向がある。
このときには、その子には、「そういう考えなんだね」と承認し、
「じゃあ次は他のお友達はどうかな?待ってみよう」と、その子以外の子が発言しやすい場をつくる。
数名の子が発言した後に、みんなの前では話せなかった子がいる。
このときに、発言しなかった子に対しても、「しっかりとお話しを聞いていたね」と承認する。
こうすることで、「発言したくてもできなかった」という失敗感がなくなり、
保育者は自分を見てくれていたという「自信」がつく。
保育者はこの2つの言葉がけの大切さを意識することで、子どものより良い成長を促すことに繋がる。
3 ADHDの子、周囲のことを気にせずにどんどん発言してしまうとき
「いっぱいひらめいたね。次はAちゃんが考えているから、ちょっと待ってみようか」
というように、たくさん発言することを否定せずに、待つ行動を促すと良い場合がある。
4 体験して、話し合う。
体験をしたことを、活動後に振り返りとして、絵をつかって話し合う時間を設ける。
また、絵をきっかけに新しいことを知り、ワクワクして、体験に向かうことも考えられる。
5 自作自演の子の対応
ある子が、「靴を無くした」といってきた。
クラス全員で探し始めたところ、その子がすぐに靴を見つけてきた。
クラスの子は、その見つけた子を「よく見つけたね!」と褒めた。
数回それが繰り返されたため、自作自演だと気付いた。
みんなから称賛を浴びたかったのだろう。
ここで、保育者が「自分で隠しているんじゃないの!」というと、その子が傷ついてしまう。
このような子の場合、その行為に至った背景を知り、アプローチする必要がある。
例えば、活動のなかで、みんなから注目を浴びる機会を増やすなど。
こうすることで、その子が自分に自信を持つことができ、心が育まれることが期待される。
6 教えると、育むの違い
対人関係は、教えられてやるものではない場合がある。
「人に優しくする」「人にお礼を言う」「人にあいさつをする」「あやまる」など。
誰かに優しくしてもらったことで、優しくされると嬉しかった、ほっとしたなどの感情体験があり、
それを通じて、自分も誰かに優しくしたあげたいという気持ちから、優しい行動をする。
これの流れを踏まえると、保育者が、子どもに優しくすること見本にすることが一つの環境要因となる。
7 にらむ子の対応と、喜怒哀楽のアートの活用ポイント
にらむ子に、「にらまないの!」と教えても、その子のにらんだ背景が解消されたわけではない。
例えば、家庭でや大人との関係性のなかで、大人を信じられないなどの感情があるかもしれない。
喜怒哀楽の絵を見せる際には、「人をにらんではだめ」という結論を導くのではなく、
「この子はどんな気持ちかな?」と考えさせることをきっかけにして、
その子の内面をイメージさせることを通じて、自分の内面を話させることが有効かもしれない。
8 自立とキッズ版の役割
自立が「自分の意見を言い、行動すること」であれば、
成長段階には、以下の3つのような絵の表示方法が適しているかもしれない。
レベル1 2つの絵を比べて、違いを考える(3歳~)
レベル2 1枚の絵から、自分の感じた事を発言する(4、5歳~)
レベル3 複数でディスカッションする(小学生低学年~)
レベル4 ファシリテートする(小学生低学年~)
10 NOと言える子が減っている
小学校に入ると、休み時間に教室に先生がいないことが多い。
そのため、友達同士で何か起きた時には、自分たちで解決しなければならないことが多い。
最近の園児のなかでは、「NO」と言えない子が増えている。
「Aちゃんが遊ぼうって言ってくるから、遊ぶ。一緒に遊ばないとAちゃんが怒るから」
自分主張を言えないままでは、人の顔色をみて行動する子に育つリスクがある。
こういうときには、
「ちゃんとAちゃんの気持ちをわかっていて、優しいね。
でも今は、一人で遊びたかったんだよね。」
と行動を肯定化して、気持ちを理解してあげる。
「Aちゃんに今は一人で遊びたいから、後から一緒に遊ぼうと伝えてみたらどうかな」など、
具体的にどう行動させるかを示すか否かは、そのときの場面に応じて、検討する。
11 できている!という行動を促すためにキッズ版を活用してはどうか?
2枚の比較の絵を見せるのではなく、
片方の絵のみを見せる。
本を片付けられている絵、靴を揃えている絵など、できている絵のみを見せて、
「これはできているよね」と、できていることを確認するように活用する。
こうすることで、「できてるし!」など、ポジティブな気持ちで、アートを見て、意見を引き出すことができるのではないか。
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以上、お話しの一つひとつが大変勉強になりました。
引き続き様々な保育関係者様の価値観を学びながら、より良いアート開発に努めて参ります。
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