第15 回大老協懇話会にて、ミッケルアートについて発表されました。
こちらの施設では、ミッケルアート導入にあたり、「ミッケルアート回想療法士」の認定
研修を受け、その過程で関わったご利用者の変化や効果について研究されました。
評価方法は、認知症行動障害尺度(以下DBDスケール)を用い、しっかりと数値化することで、 変化が分かりやすい結果・考察となっています。
ミッケルアートについて、「ミッケルアートとは、絵の中に「見つける」「思い出す」と いう工夫がされた絵画で、ご高齢者と介護スタッフの年齢差による世代間のギャップを縮めるため、 いつでも、どこでも、誰でも使えるコミュニケーションツールである。」と伝えてくださいました。
今回の研究では、介入期間も短く対象者も少なかった為、効果を決定づける事は出来なかったとのことですが、介入の仕方、介入のタイミングによってBPSDの改善やQOL の向上等効果の現れ方に、大きな差が出る事が確信出来たとのことです。
今後、他のご利用者へ広げていく際には、しっかり見極めて介入し、ご利用者の生きた軌跡に目を向けていきたいとのことでした。
以下、発表内容
研究方法
・研究期間:平成 26 年 12 月 15 日~平成 27 年 4 月 30 日
・対象者:認知症の診断を受けた入所者。(特に昼夜逆転や、介護拒否のある方のうち 3 名)
・実施日時:週 2 回(火・木)10:00~10:20、個別に実践。
・評価方法:DBDスケールを用いる。28 項目中 13 項目のみで評価。
結果
A氏:
DBDスケールが 22 点から、8 点への大幅な改善があった。介入前は昼夜逆転で、
不機嫌な表情だったが導入後、夜間に良眠出来るようになり穏やかな表情が多く
なった。
B氏:
DBDスケールが 28 点から、18 点になったが、期間中に転倒し疼痛により、被害
妄想や悲観的な言動が再度出現。DBDスケールは、最終的に 24 点へ変化。
C氏:
絵画に興味がなくDBDスケールも 29 点から、28 点の変化に止まっている。介入
により音楽に興味があることが分かった。
考察
1. A氏は、先行研究同様の効果が顕著に見られた。会話が好きな方であった為、話が広
がりやすく回想療法としての効果が高まったと考えられる。
2. B氏は、疼痛やその他アクシデントによって十分な効果が期待出来ない事が分かった。
疼痛出現以前は効果があったので、今後疼痛が消失すれば再び効果が期待できるので、
今後も介入を継続。
3.C氏は、日頃から介護に拒否傾向で、興味の持てない絵画での介入は困難だった。絵
画を子供っぽいと拒否される事もあった。
4. 他の回想療法と大きな違いは 2 つあった。 1ミッケルアートは絵画を用い、注目する複数の要素を盛り込んでいて興味が持ちやすい。その為、A氏と会話が広がり笑顔も増えた。 2介入者の高齢者から教えて頂く姿勢が、相手の自尊心を刺激し、年齢差が逆に強みになる。
参考文献
鈴木正典:認知症予防のための回想法、日本看護協会出版会、2013 年
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