レビー小体型認知症は、幻視、パーキンソン症状、睡眠時の異常行動などが特徴の認知症で、アルツハイマー認知症に次いで2番目に多いと言われています。
今回は、ミッケルアート回想法を使ったレビー小体型認知症の方の改善事例を紹介します。
【ミッケルアート回想法】実施前の状況
90代のA様は、平成21年頃に気分の低下や幻覚症状が見られ、病院受診にてレビー小体型認知症と診断されました。
自力で車椅子に移乗できるなど、日常生活ではある程度自立した生活を送っていたものの、認知機能の低下により帰宅願望の症状が強く出ている状況でした。
A様の情報
ミッケルアート開始前のA様の詳細は、以下の通りです。
年齢 | 90代 |
性別 | 女性 |
要介護度 | 要介護度3 |
認知症の種類 | レビー小体型認知症認知症 |
認知症自立度 | IIB(家庭内外で日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが見られる。要見守りの状態。) |
寝たきり度 | B1(車椅子の移乗は自立。生活の中心はベット上だが、食事・排泄は、ベッドから離れる。) |
生活状況 | 平成21年頃に気分が落ち込み不眠、集中力低下の症状が現れる。 「パプリカという組織に支配されている」といった被害妄想もあり。 病院受診にてレビー小体型認知症と診断される。 |
ミッケルアート回想法の具体的な取り組み
A様には、次のようにミッケルアート回想法を実施しました。
実施期間…4ヶ月
取り組み内容…1日10〜20分、A様にミッケルアート回想法を実施(毎日ではない)
工夫した点…ゆっくりと話を聞き、言葉遣いに注意するようにした
【ミッケルアート回想法】実施後の改善結果
A様のケースでは、2つの改善点が見られました。
日中の寝ている時間が減少し、他者とのコミュニケーションが深まる
季節に合わせた服装の改善
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
1. 日中の寝ている時間が減少し、他者とのコミュニケーションが深まる
日中ベッド上で過ごされることが多かったA様ですが、ミッケルアート回想法を通じてほかの利用者様や職員様との会話が増え、食堂で過ごす時間が増えました。
ミッケルアート回想法を続けて4ヶ月後、割烹着をきている女性を指差し、「割烹着をよく私も着ていたんだ」と伝える行動の変化も見られるようになりました。
通常、認知症の患者さんはできないことが増えると、自分を守るために他者との交流を回避しようとします。しかし、A様は回想法を通じ他者との関係を作りはじめたことで、自然に交流するようになったのでしょう。
A様は失われていたやる気や興味を取り戻し、交流する楽しさを感じるようになったそうです。
職員様のレポートにも「A様の笑顔が多くなった」と報告されています。
2. 季節に合わせた服装の改善
A様のもう一つの大きな変化として、季節に合った服装をするようになった点が挙げられます。
認知症の症状の中に、年月日や曜日、季節、時間の感覚が分からなくなり、時間の認識が薄れる見当識障害と呼ばれるものがあります。
季節に合った服装を選ぶことができないのは見当識障害の初期症状の1つで、夏なのに冬服を着用して暖房をつける、冬なのに半袖を着用するといった行動により、脱水症状などを引き起こす可能性があります。
職員様のレポートによると、A様はミッケルアート回想法を始めて2ヶ月の間、週に1度は「季節に合わない、不適切な服装」をしていたそうですが、3ヶ月目以降はそのような行動は見られなくなったそうです。
このことから、ミッケルアート回想法は、見当識障害の改善にも効果があると言えます。
ミッケルアートを行った改善事例のまとめ
今回は、レビー小体型認知症の方のミッケルアート回想法の改善事例を紹介しました。
A様のケースでは、他者とのコミュニケーションが増え、日中の活動時間が増えた、季節に合わせた服装ができるようになったという大きな変化が見られました。
また、職員様のレポートでは、ミッケルアートの回想法を体験したA様が、その後も自発的にお話をしてくれるようになったことが報告されています。
ミッケルアートは利用者様と職員様、利用者様同士の交流を促すコミュニケーションツールです。
交流を重ねて信頼関係を築くことで、無気力・無関心、昼夜逆転、徘徊、介護拒否など周辺症状緩和への有効性が確認されています。
皆様のケアの参考になれば幸いです。
Comments