ミッケルアートは、介護者様との関係性をより深めていくためのツールです。
今回は、レビー小体型認知症を発症した88歳の方の事例を紹介します。
ミッケルアート実施前は、周囲にあまり関心を示さず、無気力な様子が見られた利用者様。
ミッケルアートを3カ月実施した後は、自発的に会話に加わる、冗談を言う積極性や明るさが見られる、運動を継続するなど、向上心が戻ってきました。
ミッケルアートによってどんな変化が見られたのか、詳細をお伝えします。
ミッケルアート回想法の実施前の状況
ミッケルアート回想法を体験いただいたのは、レビー小体型認知症を発症している利用者様です。
実施前は周囲にあまり関心を示さず、無気力な様子が見られました。
利用者様の情報
年齢 | 88歳 |
性別 | 女性 |
要介護度 | 要介護度2 |
認知症の種類 | レビー小体型認知症認知症 |
自立度 | Ⅲa |
寝たきり度 | A1 |
生活状況 |
|
認知症の症状や生活状況
手の震えなどの症状があり、日常生活に支障をきたしている
日中ベッドに横になっていることが多い
同じことを何度も聞く
行動や意志疎通が難しい場合があった
ミッケルアート回想法の実施
ミッケルアート回想法は、過去を思い出すきっかけになるようなアートを見ていただくことによって、認知機能に働きかける回想法のひとつです。
実施期間...4月から9月の3ヶ月間
実施内容...入学式や夏祭りなど季節行事にまつわる絵を取り入れ、コミュニケーションの活性化を図った。
回想法を通じた利用者様の反応
利用者様はミッケルアート回想法の絵を通して、次のような出来事を思い出されました。
幼い頃は家事や家業の手伝いで遊ぶ時間がなかった
結婚してからも家事をひとりでこなしながら子供4人の子育てをしていた
近所の友達と夏祭りにいくのが楽しみだった
お母さんの手料理がおいしかった
家族みんなでちゃぶ台を囲んでご飯を食べた、など。
これまでの人生で大変だった出来事や楽しかった記憶を、生き生きと語ってくださいました。
おそらく、利用者さまは「誰かと楽しく過ごしたい」「行事やイベントを楽しみたい」といった気持ちがあったのでしょう。
さらに会話を重ねる中で、体力の低下に関しても話してくださいました。
立っていると疲れる
ふらつきを直したい
手が震えて文字が書けない
ミッケルアート回想法によって改善した症状
ミッケルアート回想法を3か月間実施した結果、特に改善が見られたのは次の2点です。
対人交流の積極性の増加
前向きな意欲の向上
それぞれについて、詳しくお伝えします。
1.対人交流における積極性の増加
ミッケルアート回想法を実施する前は部屋に引きこもりがちでしたが、実施後は部屋から出てこられるようになりました。
コーヒーを片手に他の利用者様と談笑したり、自分からまわりに話しかけて冗談を言いあったりと、積極的な対話行動も見られるようになりました。
利用者様は、もともとは社交性が高かったそうです。
みっけるアート回想法に加え、施設内外の他者と関わりを持つ機会を作る、間に入って会話をつなぐなど、的を絞ったケアが功を奏しました。
2.前向きな意欲の向上
利用者様は、「体が疲れる」といった発言が多かった反面、「体を動かしたい」「散歩をしたい」といった意欲が強かったそうです。
ミッケルアート回想法実施後は、食後に運動の習慣を取り入れるなど意欲の向上が見られました。
3.その他の状況
ご家族が持参された、「点つなぎゲーム」に夢中になるなど、以前には見られなかった行動も見られるようになりました。
まとめ
ミッケルアート回想法の実施後は、認知症に特有の「何度も同じことを聞く」回数が少なくなりました。
また、普段の会話の中で「楽しく生活したい」「笑顔でいたい」など、前向きな発言が見られるようになりました。
ミッケルアート回想法は、過去を思い出すきっかけになるようなアートを見ていただくことによって、認知機能に働きかける回想法のひとつです。
思い出について話し、それを聞いてもらうことで安心し、気持ちが穏やかになる効果があります。
今回のケースでは、回想法がご本人の安心感や自信を取り戻すきっかけになり、対人関係の改善や意欲の向上といった結果につながりました。
本認知症ケア実践事例が、皆様のケアの一助になれば幸いです。
※本事例は、気づき力を高める「Love Love研修」受講者様の修了レポートをベースにしています。
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