アルツハイマー型認知症は、脳の一部が萎縮して認知機能が徐々に低下していき、認知症の中で最も患者数の多い病気です。
ここでは、ミッケルアート回想法によって、アルツハイマー型認知症の利用者様が物事への関心を持つようになり、活動にも意欲的になられた事例について紹介します。
ミッケルアート回想法を通して、職員様も新たな気づきと介護の仕事に自信を持つことができるようになりました。
【ミッケルアート回想法】実施前の状況
D様はアルツハイマー型認知症を患われ、物事への関心が弱く、⽇中はうとうとして過ごしていました。
一方で、何度も同じことを話されたり、理由もなく歩き回ったりと、落ち着かない様⼦もあったそうです。
D様の情報
年齢 | 95歳 |
---|---|
性別 | 女性 |
要介護度 | 要介護度2 |
認知症の種類 | アルツハイマー型認知症認 |
⾃⽴度 | Ⅱb(家庭内外で日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが見られる。要見守りの状態。) |
寝たきり度 | A2(日中は寝たり起きたりの生活。介助なしに外出はしないが、外出することが少ない。) |
⽣活状況 | 農業をしながら⼦供を育て上げ、平成12年に夫が他界。 その後は⼀⼈暮らしで、⻑⼥・次⼥が週に何度か訪れ、援助を受けながら⽣活している。 |
ミッケルアート回想法の具体的な取り組み
ミッケルアート回想法実施の概要は、次の通りです。
実施期間…3か月
取り組み内容…1日20分、ミッケルアート回想法を実施(毎日ではない)
工夫した点…話が広がるように質問を分かりやすいものにした。畑仕事の話を生き生きとされていたので、畑仕事の話題を多く取り入れた。楽しんで会話ができるように心掛けた。
【ミッケルアート回想法】実施後の改善結果
ミッケルアートを実施することによって、D様の症状に3つの改善行動が見られました。
1.うとうとされることが少なくなり笑顔で話されるようになった
まず、ミッケルアートの夕飯の絵に着目され「自分が作った野菜が一番だよ」とおっしゃり、畑仕事について生き生きと話されました。
それ以降、「昔は体を動かすのが好きだった」「畑仕事を一生懸命やった」「家からきれいな花火をよく見た」など明るく積極的に話すようになりました。
回想法を続けていく中で、うとうと眠そうな様子が減り、D様のご自宅では美しい紅葉が見られたり、月や星がきれいだったりとなど、自然の情景を懐古される様子も見受けられるように。
2.落ち着いて過ごされるようになった
以前は浮き足立つ状況もありましたが、回想法の実地後、落ち着いて過ごす日々が多くなったのも改善点です。
理由もなく歩き回ったり、同じことを何回もお話される回数が少なくなりました。
また実施前にときどきあった「物をなくす行為」もほとんどなくなりました。
3.物事への関心を持ちだし活動も意欲的に
ミッケルアート実施後には、「駅弁を食べたことがないので食べてみたい」、「みかんは甘いのがいい」「もみじ饅頭を食べたい」と食べ物への関心を示すようになっています。
またミッケルアート実施前は、体操の時にはよくため息をつかれていたのですが、実施後には、長い距離を歩いておられたことを誇らしそうに話され、「歩くのが一番じゃ」とおっしゃられるようになりました。
たまに景色を見るために外に出ることもあります。
職員様自身の介護にも自信つく
もともと活動が少なかったD様。
D様とミッケルアートを通した会話を重ねていく中で、ご自身について生き生きと語られる状況に直面した職員様は、どんな苦労されてきて、どんなことに興味があるのかに気づいたと言います。
職員様は、D様について新たに知った内容について、今後も日常会話に生かしていき、D様が「少しでも楽しく⽣活できるよう⽀援していきたい」と明るく語っています。
まとめ
ミッケルアート回想法は、認知症の方が自信を持った言動を促し、精神的な安定をもたらす点が指摘されています。
また介護職員様の「できた」という体験は、職員様の喜びや、やりがいにつながるとも言われています。
利用者様の症状が緩和されるとともに、職員様も介護のやりがいを感じたD様の事例は、この好循環が形成された典型的なケースであるといえるでしょう。
参考
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