脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって発症する認知症です。
アルツハイマー型認知症に次いで患者さんが多く、認知症全体の20~30%を占めています。
今回はミッケルアート回想法を実施することにより、この脳血管性認知症の方の症状が改善された事例を紹介します。
【ミッケルアート回想法】実施前の状況
C様は平成21年に脳梗塞を発症し、退院後に脳血管性認知症になられ老人保健施設に入所しました。
平成28年には、重度の⼤動脈弁狭窄症が認められ手術を受けています。
手術後、日中は暗い部屋で過ごし、一日中ベッドに横になっている状態が続き、また、職員様が声をかけても一言・二言の会話があるだけの状況でした。
C様の情報
年齢 | 65歳 |
性別 | 男性 |
要介護度 | 要介護度4 |
認知症の種類 | 脳血管性認知症 |
ミッケルアート回想法の具体的な取り組み
ミッケルアート回想法の概要は、以下の通りです。
実施期間…3か月
取り組み内容…1か月目は1日15分ほどミッケルアート回想法を実施(毎日ではない)。 2か月目からは30分に伸ばす。
注意した点…興味を持って自主的に会話をされるのを大切にしながら取り組む。
工夫した点…体調に気をつけながら、C様のペースに合わせて⾏う。
【ミッケルアート回想法】実施後の改善結果
ミッケルアート回想法を通して、どのような変化があったのでしょうか。
ここでは、実施後に見られた3つの変化を説明していきます。
1.明るく笑顔で話すようになった
以前より明るく笑顔で話すようになりました。
まず、絵に描かれたお祭りの風景に着目して、奥様とお祭りに行った思い出をお話されました。
以後も、「茶の間の絵」の絵で「芋天や、そうだ」と喜ばれ、お母様の手料理のことを懐かしそうに語られたり、「教室」の絵を見て「学生時代が一番楽しかったな」と懐かしそうに職員様に話されたそうです。
特に興味があるものが絵に出てくると、指をさして「これ、これだよ」と⼤声で笑いながら話す機会が増加。会話を通じて、C様が奥様との思い出と⾼校の⼊学式の記憶を大切にしていると分かりました。
ミッケルアート回想法を続けることによって、さらに行動上でも、⼝腔ケア体操に笑顔で意欲的に取り組まれるように変化していきました。
2.職員様との関係が緊密に
職員様との関係も以前とは大きく変わりました。
以前は一言・二言で終わってしまっていた職員様との会話も、笑顔で明るく楽しそうにされるように。
一緒にミッケルアートを行った職員様を見かけた時は、「どうしたの?」とC様の方から声かけをされるようになりました。
また、おやつの時間に職員様が伺うと「あっ、また来たんだね、今⽇はどうしたの?」と笑いながら話をされることもありました。
3.ほかの利用者様とも楽しそうに会話
他の利⽤者様と積極的に会話をされるようになられたのも大きな特徴です。
ホール内で、他の利⽤者様と笑顔で会話をされている様子をよく見かけるようになりました。
さらにC様の行動の変化として、⼊浴後、ベッドに横になられている利⽤者様の元にいき、⼤きな声で楽しそうに話をする様子も見受けられるようになりました。
ミッケルアートを行った改善事例のまとめ
1対1で行う回想法は、話し手のペースに合わせて共感しながら話を聞くことで、話し手と聞き手の信頼関係を築くことができます。
また話し手は抑うつ的な思考や不安から開放され、精神状態が内向きから外向きになる結果も出ています。
今回の事例は、ミッケルアート実施後のC様の様子から、ミッケルアートを実施した職員様との信頼関係が築かれたことが基礎になってC様の症状が大きく緩和されたものである、ということが推察されます。
ミッケルアート回想法の実施時にC様が自主的に話されるのを大切にしたことが、回想法の効果を十全に引き出したと言えるでしょう。
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