「意思疎通がなかなかとれない」「予期せぬ行動をとることが多い」といった行動で職員様も対応に苦慮していたA様。そこでミッケルアート回想法を実施したところ、A様自身で身体を動かす機会も増え、意思疎通がとれるようになりました。
今回は、94才のアルツハイマー型認知症である女性の改善事例を紹介します。
【ミッケルアート回想法】実施前の状況
夜間に眠れない様子は見られなかったのですが、日中によくうとうとされていました。
声掛けに返答はある状態でしたが、つじつまが合わず、会話もかみ合わないケースが多かったようです。
さらに、夕方になると帰宅要求が強まり、予期せぬ行動もみられ、職員様も対応に苦慮されていました。
A様の情報
A様の詳細な情報は、下記です。
年齢 | 94歳 |
性別 | 女性 |
要介護度 | 要介護度4 |
認知症の種類 | アルツハイマー型認知症 |
⾃⽴度 | Ⅲa(日中を中心に、日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが見られる。介護を必要とする) |
寝たきり度 | B1(寝たきり状態であるが、介助なしで車いすに移乗する) |
⽣活状況 | ・⾃宅で1⼈暮らしをしていたが⼊院治療後、現介護⽼⼈福祉施設に⼊所。 ・歩⾏はできず⾞椅⼦を使⽤。 ・⽇頃、移乗、移動等に⾒守り、介助が必要。 ・施設内の⾃⾛は⾏うが⾝体維持が不安定で常に⾒守りが必要。 |
ミッケルアート回想法における具体的な取り組み
A様に行ったミッケルアート回想法の具体的な取り組みは、以下の通りです。
実施期間…3ヶ月
取り組み内容…1日20分、ミッケルアート回想法を実施(毎日ではない)
工夫した点…興味を持って参加が出来るように事前に話の内容や話題を考えながら実施した。つじつまの合わないあ話が多かったが、本⼈の会話内容に合わせながら、参加者全員が共有できる質問内容を使い、楽しく参加してもらう心掛けた。
【ミッケルアート回想法】実施後の改善結果
ミッケルアート回想法にはどのような結果が現れたのでしょうか。
ここでは、ミッケルアート回想法の改善結果を4つ挙げます。
1.ミッケルアートに興味を示し、楽しみするようになる
ミッケルアートを開始時には、うとうとされたり「あー眠たい」と声を出していました。
しかしながら、回数を重ねていくにつれて、2か月目には、子どもの絵を見て「かわいい、かわいい」と喜ばれるように。眠くて会話が広がらないときもありましたが、3か月目にはうとうとされる日が減りました
「今日は何?」と興味をもって職員様に尋ねるようにもなりました。特に稲刈りや、畑仕事の話で会話が弾み、ほかの方の話にも耳を傾けながら、参加している様子もよくみられました。
2. 身体をよく動かすようになる
普段は、寝て過ごす日々が多かったA様ですが、ミッケルアート実施後は、覚醒時間が増加しました。
時折、⾞椅⼦を⾃⾛し移動する様子も⾒られ、表情も以前に⽐べて明るく、また⾝体を動かす機会も多くなりました。
3. 他の方との会話が増える
職員の方に声を掛けながら、会話を楽しむ機会が増えました。
さらに、まわりの様⼦を⾒ながら⼤笑いをしており、職員の方が「どうしたんですか?」と話しかけたところ「いいやなんでもないのよ」と返答したそうです。A様が会話そのものを楽しんでいる様子が見受けられます。
⽇によって違いもありますが、つじつまの合わない返答は少なくなり、相⼿の話す内容に⽿を傾けられるようになってきています。
4.落ち着かない場合も、声かけで安心するようになる
ある日の夕方に「農協に⾏きたいの」とまわりに話し、落ち着かない日がありました。
お⾦について心配され、帰宅要求が強く、思いも寄らない行動をとっていたA様でしたが、職員の方が間に⼊り声をかけると「あんたが来てくれた!」とほっとした表情をされたそうです。
見知った職員の方との会話を通じて、安心を得たのでしょう。以降も、見知った職員の方との会話で帰宅願望が和らぐようになりました。
まとめ
A様にみられた改善結果は以下の通りです。
ミッケルアートに興味を示し、楽しみするように
身体をよく動かすようになった
他の方との会話が増えた
落ち着かない場合も、声かけでで安心するようになった
ミッケルアート終了後に、職員様は「他者との関わる時間が増えたことで声を掛けられる姿も多く⾒られるようになってきました。ご本⼈の⾏動を⼤切にしながら、多くの⽅とコミュニケーションが取りやすいように、環境⾯から本⼈が安⼼して過ごす事が出来るように努め、継続して実施していきたいと思いますと語っています。
皆様の認知症ケアの参考にして頂けたら幸いです。
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