認知症の中で最も患者数が多いアルツハイマー型認知症。
今回は、ミッケルアート回想法を通して歌を明るく口ずさむほど表情が豊かになった、アルツハイマー型認知症であるB様の事例を紹介します。
【ミッケルアート回想法】実施前の状況
B様は、⾞椅⼦に座りながら、顔を下に向け寝て過ごされる日々を送っていました。
一人で何かつぶやき、ほかの方と会話している姿を見かけることは稀です。
リハビリ体操のときもうとうとし、時々顔を上げてもすぐに寝るといった状況でした。
B様の情報
B様の詳しい情報は下記です。
年齢 | 90歳 |
性別 | ⼥性 |
要介護度 | 介護度4 |
認知症の種類 | アルツハイマー型認知症 |
⾃⽴度 | Ⅲa(日中を中心に、日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが見られる。介護を必要とする |
寝たきり度 | B2(寝たきり状態であり、介助により車いすに移乗する) |
⽣活状況 | アルツハイマー型認知症あり。近時記憶に曖昧さが⽬⽴つが⽇常会話は⽀障なくできる状態 |
ミッケルアート回想法の具体的な取り組み
B様におけるミッケルアート回想法の具体的な取り組みは、以下です。
実施期間…3か月
取り組み内容…1日20分、ミッケルアート回想法を実施(毎日ではない)
工夫した点…⼩⼈数で取り組んだが、関心を持つところが一人ひとり異なったり、ほかのことが気になり、集中できない場合があった。様⼦を⾒ながら話題を少しずつ広げ、みんなで会話ができるように留意する。B様は視力が弱く、絵が見えにくいため声をかけつつ説明をした。
【ミッケルアート回想法】実施後の改善結果
ミッケルアート回想法の改善結果は以下の4つです。
詳しく見ていきましょう。
1. 会話が増え、笑顔が多く見られるようになる
B様とミッケルアートを実施したところ、昔を思い出しながら、食べ物や学校のことなどを嬉しそうに話されました。特に、学校で得意であった音楽の話では「リンゴの唄」を歌い楽しそうな様子がみられました。
回数を重ねるうち、絵を見て「⼦供が描かれているけど、何をしてるのだろう」とB様の方から話かける機会が増えました。
ミッケルアートを実施しなかった4か月目は、「今日は何もないの?」とミッケルアート回想法の時間を楽しみにしている様子も見られました。
2. コミュニケーションが広がる
回想法を続けるうちに、会話の中で参加者の声に⽿を傾けながら、うなずいたり、笑ったりするようになりました。話題も広がり、楽しんでいる様⼦もよく見られたようです。
3. 表情が豊かになり活動的になった
実施前に⽐べると、表情が豊かになりました。
例えば、B様が目を閉じて何かつぶやいたため、職員様が話しかけると、「いや、元気で調⼦が良いよ、何か歌いたい気分だよ」と朗らかに話す場面もあったとのこと。「寒い、寒い」といった訴えやトイレに対しての⼼配も軽減し、周辺症状も穏やかになってきたそうです。
リハビリ体操のさいは、職員の動きに合わせて体を動し活動的にもなりました。
4.職員との関係が深まった
ミッケルアート回想法を実施した職員様に会うたびに、B様から声をかけられるようになりました。
例えば「あんた久しぶり、たまにはまた何かやってよ!」と言われ、職員様もなじみの関係が出来たと感じています。
笑顔も多く⾒られ、歌を歌いながら過ごす時間も増えています。
まとめ
認知症の高齢者は、ご本人の感情やまわりの人への関心を表現するのが苦手だと言われてきましたが、B様はミッケルアート回想法を通して、表情が豊かになりました。
利用者様が感情表現ができるように声かけすると、活動の意欲を高め、不安や抑うつの症状が改善されたと考えられます。
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