アルツハイマー型認知症のA様は帰宅願望が強く、普段から部屋で横になり過ごされている状況でした。今回は、ミッケルアート回想法を通して笑顔が増え、帰宅願望の症状が緩和した事例を紹介します。
【ミッケルアート回想法】実施前の状況
A様はフロアに出てこられることは少なく、部屋で過ごされる日々が続いていました。
「家に帰りたい」とおっしゃることが多く、職員様が「お茶を飲みに行きましょう」「体操をしませんか」と声をかけても、「のどが渇いてない」、「腰が痛い」等の理由で、拒否される場面がよくみられました。
A様の状況
ミッケルアート開始前のA様の詳細は、以下の通りです。
年齢 | 84歳 |
性別 | 女性 |
要介護度 | 要介護2 |
認知症の種類 | アルツハイマー型認知症認 |
認知症⾃⽴度 | Ⅱa(家庭外で日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる) |
寝たきり度 | A1(屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない。日中はほとんどベッドから離れて生活する。) |
⽣活状況 | 日常生活は一本杖で歩行が可能であるが、認知症状の悪化やリハビリの継続という家族の希望もあり、施設入所。歩行も安定しているが、自宅での生活が困難な為、家族の希望のもと本施設に入居となった。 |
ミッケルアート回想法の具体的な取り組み
A様には次のようにミッケルアート回想法を実施しました。
実施期間…3か月
取り組み内容…1日10~30分、ミッケルアート回想法を実施(毎日ではない)
工夫した点…耳が悪く、補聴器をつけていてもほかの方の声が聞き取りにくいため、少人数で実施。ほかの方と話しやすい環境を作り工夫した。
【ミッケルアート回想法】実施後の改善結果
ミッケルアート実施後、A様の症状に多くの改善がみられました。
1.「家に帰りたい」との発言が減った
ミッケルアート回想法を開始してから笑顔が増え、他者との話も弾み、2か月目には「家に帰りたい」との発言が減りました。
3ヶ月目には「楽しく過ごしたい」「私はずっとここにいてもいいのかしら」と笑顔で話す機会も多くなりました。
2.体操にも参加するようになった
体操の声掛けに対して、「体が痛いから体操はしたくない」と言われましたが、職員様と話をしていくうちに「でも、やれるだけやってみる」と言ってフロアで体操に参加するようになりました。
また「散歩にいきませんか?」と声掛けをすると、「歩かんとね〜」とほかの利用者様と共に外出レクに参加するようになりました。
その他にも「お茶を飲みませんか?」と声をかけると、フロアに来られるようになりました。声掛けをしていない時でも、自分からフロアに来て「お茶を飲まんとねえ」とおっしゃることもありました。
3.ほかの利用者様と笑顔でお話をするようになった
A様は、以前から「ほかの方と話をするのが好きじゃない」と話してらっしゃいました。
ミッケルアート回想法を通して話をする中で、ほかの方にも笑顔を見せることが多くなりました。
ミッケルアートの活動が終わった後も、ほかのご利用者様と楽しそうに会話をする様子がみられています。
A様は普段補聴器を利用していますが、人の話が聞こえづらい時があります。
ほかの利用者様とコミュニケーションが取りにくいときは、職員が間に入りサポートしています。これまでは、相手の声が聞こえづらく苦労されていましたが、他者と会話できるようになり、A様はとても楽しそうにしています。
まとめ
今回は、ミッケルアート回想法を通して帰宅願望の症状が緩和された事例を紹介しました。
帰宅願望が出る要因は、利用者様が自分の居場所がわからないといった不安や、周りに知り合いがいないなどの孤独感がきっかけだといわれています。 今回のケースでは、職員様と利用者様との強い信頼関係の構築がA様の症状の緩和につながったと考えられます。
ミッケルアート回想法を実施した職員様は、ミッケルアートを上手に使い継続的に会話する場を作り、日々声掛けをしました。結果として、A様との信頼関係の構築ができたようです。 職員の方は「今後も意識的にコミュニケーションを取ることを大事にしたい」とおっしゃっています。
参考文献:
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