アルツハイマー型認知症は、脳の一部が萎縮して認知機能が徐々に低下していき、認知症の中で最も患者数の多い病気です。
今回はミッケルアート回想法を実施することにより、部屋で横になっていることが多かったアルツハイマー型認知症の利用者様に笑顔が増え、ホールにて水分提供を受けるなど活動にも意欲的になられた事例について紹介します。
この事例は、ミッケル研修の認知症ケア力を高める「LOVE LOVE研修」を受講された方の修了レポートがベースとなっております。
【目次】
ミッケルアート回想法 実施前の状況
具体的な取り組み
実施後の改善結果
職員の気づき
1.ミッケルアート回想法 実施前の状況
A様の情報
年齢 | 80代 |
性別 | 女性 |
要介護度 | 要介護度2 |
認知症の種類 | アルツハイマー型認知症 |
自立度 | Ⅱa |
寝たきり度 | A1 |
A様は、3人の子どもを育てながら仕事の機織りを行う。自宅の畑で野菜を育てていたが、10年前から腰痛や骨折で治療を受ける。日常生活が難しくなり、老人保健施設に入所。認知症も進行し、グループホームに移る。
C様の情報
アルツハイマー型認知症のA様は帰宅願望が強く、普段から部屋で横になり過ごされている状況でした。
今回は、ミッケルアート回想法を通して笑顔が増え、帰宅願望の症状が緩和した事例を紹介します。
2.ミッケルアート回想法の具体的な取り組み
ミッケルアート回想法の概要は、以下の通りです。
実施期間…3か月
取り組み内容…1か月目は1日15分ほどミッケルアート回想法を実施(週二回)。 2か月目からは30分に伸ばす。
工夫した点…利用者様が補聴器をつけており、他の方の声が聞き取りづらい為、少人数で実施し他の方と話しやすい環境をつくることを意識した。
3.ミッケルアート回想法 実施後の改善結果
※DBD13スケールを使用
開始前の2週間の様子:
A様はお茶を飲みに行く際や体操の誘いにも関わらず、断ることが多く見られました。特に、腰痛や家に帰りたいという帰宅願望がA様の日常生活に影響を与えていました。
開始から1ヶ月目の様子:
A様の反応に明らかな変化が見られました。桜の絵を見て桜に関する話題に興味を示したり、学校や子供時代の遊びについて話すことで、過去の記憶がよみがえりました。また、家族や地域の話題にも敏感に反応し、自分の経験や思い出と関連付けて会話を楽しんでいました。
開始から2ヶ月目の様子:
A様の自己アイデンティティや過去の経験に対する自信がさらに高まったような表情をされています。温泉や田舎暮らしの話題に興味を示し、自分の生活や家族との関係性を振り返ることで、A様の心身の安定が促進されたようです。さらに、日常生活でのお声掛けにも積極的に応じ、職員との信頼関係が深まっていきました。
開始から3ヶ月目の様子:
A様の日常生活における不安が大幅に軽減されました。周囲とのコミュニケーションも円滑になりました。特に、日常の声掛けに積極的に反応し、自分の意思を表明されるようになりました。
4.職員の気づき
日々の活動に活かすためには、信頼関係の構築が鍵となります。利用者様が日常の声掛けに積極的に反応し、自らの意思を表明するようになったことから、声掛けやコミュニケーションによる信頼関係の構築が重要だと再認識しました。
また、利用者様の興味や関心に合わせたテーマやアクティビティの提供も効果的です。アイデンティティや過去の経験に関連する話題を取り入れることで、自信を持ち、積極的に参加する姿勢が促進されました。
活動計画の策定や実施においては、利用者様の個々のニーズや興味を十分に考慮し、信頼関係を築きながら利用者様の生活の質を向上させることが大切だと感じています。
今回の事例は、ミッケルアート回想法実施後のA様の様子から、ミッケルアートを実施した職員様との信頼関係が築かれたことによりA様の日中の傾眠傾向が大きく緩和されたものである、ということが推察されます。
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